LAZY【novel】03


外は土砂降りだ。
麻衣は窓に額を寄せて、不規則に響く雨音を聞いていた。
ここ澁谷サイキックリサーチに、本日来客の気配は無い。
事務所には幕が張られたような静寂。
「また今日も雨だね、ナル」
飽和した沈黙を嫌ったのか、ぶち破るようにポツリと投げかけられた甘く高い声。
ふー…っと物憂げな顔がガラスに映っている。

それを視界に入れることもせず、その声色だけで表情を察知したナルは、読んでいた本のページをめくった。
「おまえは天気予報を見ていないのか?」
「ん?見てるよー。ちゃんと傘持ってきてるし。」
「ならわかってると思うが。――――――来週いっぱいまで雨だ。」
「む。」
ぺらりとかすかに紙の立てる音。
読み進める音。
雨に外の音は消され、室内の静寂が際立つ夕暮れ。
そろそろバイト終了の時刻だ。
「あーあ。ここに安原さんがいたらなあ。」
あいにく彼は本日お休みである。

ぱたん。
本が閉じられた。
驚いて振り向くと、ソファーに深く沈んでいたナルが席を立ったところだった。

「? ナル、出かけるの?」
「いや、そろそろ送っていく。」
「そ?ありがとう」
にこりと笑みを浮かべる麻衣を、当然と満足そうに見やってナルはオフィスのドアを開けた。


途端に雨音がリアルに耳を打った。





デイヴィス博士の読書を邪魔しても「うるさい」と振り払われないどころか、
わざわざ所長室から出て同じ空間を共有する時間を持つことを選ばれている、会話の成立する相手。

自分が特別扱いされていると麻衣が気づくのは、もうほんの少しあとのこと。

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≫雨の降る日(09/02/08)
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