LAZY【novel】01


見通しの良い交差点。
賑やかな笑い声。
高い高い青空。
そんな世界に、私は立っていました。



とつとつと語りかける少女に、真砂子は着物の袖で口元を押さえながら首肯を度々繰り返していた。
その隣には今日も今日とて黒尽くめの格好のSPR所長、ナルが佇んでいる。

今回の依頼者は、幽霊その者。
麻衣は紅茶と玉露をローテーブルに静かに置いた。
イレギュラーズのぼーさんと綾子とジョンにはまだ連絡していない。
その必要はないだろうとのナルの判断である。
そのことに、麻衣も真砂子も、できれば除霊はしてほしくなかったのでひとまず安堵していた。

ふっと優雅にカップを持ち上げたナルが、一口飲んで口を開いた。
「くだらない」
素気無い毒舌に、瞬間、わずかに幽霊がゆらぐ。
「この方は、ご自分が殺されたという事実を拒んでらっしゃるのですわ。」
「認めたくないのは解かりますが、このまま留まっていても事態は悪化するだけです。」
安原さんが後を引き継ぐ。
「魂だけの存在はとても影響を受けやすいんでしたね。」
リンさんも少女を説得するように語り掛ける。
「あなたが、あなたであるうちに、去ったほうがいい。」

少女は困ったように眉をよせ、ものいいたげな眼差しを真っ直ぐに向けてきた。
向こう側がすけるその体。
麻衣は、おぞましいとは思わなかった。
そして、なぜ自分がその視線を受け止めているのかがわからなかった。
「私は、みんなの言っていることが正論だと思う。けど、あなたが困っているならそれを助けたいとも思ってる。」
少女はすうっと寄って来ると、「おきて」と唇を形作った。

背筋がぞっとした。

急速に意識が引っ張られるのを感じる。
誰かが呼んでる…?

「麻衣!!!」

ぱちりと目を開ければ、そこは病院のベットの上だった。
「よかった…」
涙ぐむ綾子に、?と首を傾げて見せれば、綺麗に彩られた唇が呆れたように歪んだ。
「あんた、交差点で女の子庇って車に轢かれたの!覚えてないの?」
まったく、あんたって子は…と眉を吊り上げてたしなめてくるのにあいまいな笑顔で返した。

そうか、あの子、助からなかったんだ…。

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≫明らかにソレは夢でした(09/02/07)
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